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第79話 ザルというよりワク

Penulis: 五慈あおい
last update Tanggal publikasi: 2026-05-18 07:20:42

「先取り学習しすぎてさー。数学だけ、もう高校レベルになっちゃったんだよね」

小学生で、高校レベルの数学。

幼稚園の頃から、パズルや数字遊びを異様な集中力でこなしていたのは覚えている。なんとなく地頭がいいんだろうな、とは思っていた。でも、ここまでとは正直知らなかった。

俺が内心で軽くショックを受けていると、ダイニングの椅子に座っていた佐伯が、自然な動作でこちらに身を寄せ、プリントを覗き込んだ。

「……加法定理じゃん」

そう前置きしてから、迷いのない口調で続ける。

「sinαはγ分のb、cosαはγ分のa。だから、aはγcosαで……」

さらさらと式を追いながら説明していく佐伯の声は落ち着いていて、まるで授業でもしているかのようだった。

理緒も、口を挟まず黙って聞いている。

その様子を横目で見ながら、キッチンですし桶を洗っていた母さんが、意外そうに声を上げた。

「あら、佐伯くんって数学得意なの? 大学が理数系なのかしら?」

視線が佐伯に向けられると、彼は一瞬だけ言葉を選ぶように間を置いた。

困ったような、照れたような微妙な笑みを浮かべて、静かに首を横に振って答えた。
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